家計管理・消費者教育──生活者の“納得感”を支える視点
2025年10月に開催された日本FP学会第26回大会では、生活者の行動や意識に寄り添う研究報告や講演が多数ありました。
中でも印象的だったのが、第1回でご紹介したJ-FLEC理事長の講演に続き、「家計管理のタイプ別アプローチ」「消費者教育の体系化」に関する示唆です。
本コラムでは、生活に直結する家計や教育の視点から、生活者の“納得感”を支えるヒントをお届けします。
※このコラムは、「制度と暮らしをつなぐ学会レポート」シリーズの第2回です。
「選択の智慧」メニュー内で、生活者の選択と行動を支える視点を連続して発信しています。
家計管理の7タイプ──“うちはどれ?”から始まる対話
東京家政学院大学・佐野潤子教授の研究では、ミレニアル世代の既婚男女を対象に、家計管理スタイルを複数のパターンに分類して分析されていました。
分類の視点は、夫婦の収入の管理方法や共通財布の有無など、実態に即した家計運営のスタイルに基づいています。
以下は、慶應義塾大学パネルデータ設計・解析センター(PDRC)が公開した資料「消費生活に関するパネル調査(JPSC)」より引用した図表2-1をもとに、生活者の理解を助けるために整理した参考分類です。

このような分類は、FPとして相談を受ける際にも非常に有効です。
「うちはどのタイプか?」を確認することで、家計の見える化が進み、納得感あるアドバイスにつながります。
特に50代以降では、これまで妻が主体で管理していた家庭も多く、今後は夫婦で収入予測を立て、使い方を話し合う時間が必要になります。
それぞれの「やりたかったこと」「これからの暮らしで大切にしたいこと」を書き出し、行動に移すことが、最も効率的で納得感のある家計の使い方になると感じています。
消費者教育の体系化──“自分ごと”へのステップアップ
パネルディスカッションで柿野 成美氏が(法政大学大学院准教授・消費者教育支援センター理事・首席主任研究員)消費者教育の体系イメージマップを紹介されました。
生活者が自らの消費者力を段階的に高めていくための目安となるもので、初めてその存在を知り、非常に有益だと感じました。
このイメージマップでは、消費者教育を「知識」「判断力」「行動力」の3つの力に分け、それぞれを育てるステップが視覚的に整理されています。
消費者としての力を育てるには、知識だけでなく、行動と判断力が必要です。
この体系化された視点は、FPとしての支援にも応用できると感じています。
例えば、金融商品の選択や契約時の注意点なども、「自分で選び、納得して行動する力」を育てる支援につながります。
最後に
家計管理も、消費者教育も、すべては「生活者の納得感」につながるテーマです。
金融リテラシーとは、知識を得るだけでなく、日々の暮らしの中で“自分らしい判断”を積み重ねていく力。
FPとして、制度や情報をわかりやすく伝えるだけでなく、生活者が“自分ごと”として捉え、納得して選択できるよう支援すること。
それが、暮らしの安心と夢の実現を支える金融教育のあり方であり、私自身の活動の軸でもあります。
このコラムは、「制度と暮らしをつなぐ学会レポート」シリーズの第2回として、“選択の智慧”の視点から、生活に直結する家計と教育のヒントをお届けしました。
次回の第3回では、年金制度と社会貢献の関係性を“俯瞰する力”の視点から読み解き、制度と社会とのつながりを生活者目線で考察します。


