年金制度と社会貢献──“自分の生活”と“社会との関係性”をつなぐ視点
このコラムは、“選択の智慧”という視点から、生活者の納得感を支える情報を発信しています。
日本FP学会第26回大会では、生活者の行動や意識に寄り添う研究報告や講演が多数ありました。
第1回では、年金制度を“自分ごと”として捉えるための視点を紹介し、生活者の選択と制度の接点を考察しました。
続く第2回では、制度の実務的な理解を深める内容として、受給・加入・運用に関する情報を整理しました。
そして今回の第3回では、制度と社会との関係性に焦点を当てた“俯瞰編”として、年金制度と社会貢献の接点について考察します。
年金制度と社会貢献──“自分の生活”と“社会との関係性”
パネルディスカッションでは、伊藤宏一氏(千葉商科大学 学長付教授)が登壇され、「年金は自分の生活を支えるだけでなく、社会にどう役立っているかを客観的に見ることも大切」と語られていました。
この言葉は、制度を“自分ごと”として捉えるうえで、生活者が社会とのつながりを意識する重要な視点を示しています。
伊藤氏の講演レジュメでは、年金制度が単なる個人の老後資金ではなく、社会全体の持続可能性に貢献する仕組みであることが強調されていました。
特に、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)によるESG投資の取り組みが紹介され、環境・社会・ガバナンスの観点から資産運用を通じて社会課題の改善を促す姿勢が印象的でした。
GPIFは、国民年金や厚生年金の積立金を長期的に安定運用する機関であり、ESG(Environment・Social・Governance)の視点を投資判断に組み込む「ESG投資」を推進しています。
このような投資は、単なる資産運用ではなく、社会全体の持続可能性を高める取り組みでもあります。
例えば、気候変動や労働環境、企業統治などの課題に対して、資本市場を通じて改善を促す役割を果たしています。
GPIFは「ユニバーサル・オーナー」として、広範な資産を持ち、長期的な視野で社会全体の安定成長を支える立場にあります。
そのため、年金制度は「自分の老後を支える仕組み」であると同時に、「社会の持続可能性に貢献する仕組み」でもあるのです。
🔗参考リンク
GPIF公式サイト|ESG投資とは
JPX ESG Knowledge Hub|GPIFのESG投資と情報開示(PDF)
生活者の視点と“俯瞰する力”
私は日頃から新聞を通じて“俯瞰する力”を大切にしています。
制度や社会の動きを一歩引いて見ることで、自分の選択が社会にどうつながっているかを考える習慣が生まれます。
年金制度も、消費者教育も、家計管理も──すべては「生活者の納得感」につながるテーマです。
制度を“自分ごと”として理解し、社会との関係性を意識することが、これからの金融教育に必要な視点だと改めて感じました。
最後に
FPとして、制度や情報をわかりやすく伝えるだけでなく、生活者が“自分ごと”として捉え、行動に移せるよう支援すること。
それが、これからの金融教育のあり方であり、私自身の活動の軸でもあります。
このコラムは、“選択の智慧”という視点から、生活者の納得感を支える情報を発信しています。
講演レジュメに基づき要約・構成しています。

