ねんきん定期便だけで安心?50代から年金を増やす3つの方法

年に1度、誕生月に届く「ねんきん定期便」。 見込額を確認して、そのまま引き出しにしまっている。そんな50代の方は少なくないはずです。

しかし、その金額をそのまま「自分の老後の年金」だと思い込むのは危険です。 50歳以上の方の定期便に載っている見込額は、「今の働き方のまま60歳まで加入し、65歳から受け取った場合」の数字にすぎません。

60歳を待たずに会社を辞めれば、受け取る額は定期便より少なくなります。 反対に、働き方や受け取り始める時期を工夫すれば、定期便より多く受け取ることもできます。 年金額は「届いた数字を受け入れるもの」ではなく、50代からでも自分で動かせるものなのです。

定期便だけでは見えない3つの盲点

盲点1:60歳以降の働き方が反映されていない

定期便の見込額は、今の加入条件が60歳まで続く前提です。 早期退職や独立で厚生年金を抜ける、60歳以降も再雇用で厚生年金に入り続ける。こうした変化は、どちらの方向にも年金額を動かしますが、定期便の数字には入っていません。

盲点2:書かれているのは「額面」で、手取りではない

実際に受け取る年金からは、所得税・住民税や、介護保険料、国民健康保険料などが差し引かれます。 ケースによりますが、手取りは額面より1割前後少なくなるのが一般的です。

盲点3:加給年金や配偶者の年金は含まれていない

条件を満たす配偶者や子がいる場合に上乗せされる「加給年金」は、見込額に含まれていません。 また、配偶者の年金は別に届くため、世帯全体でいくら受け取れるのかは、定期便だけでは分かりません。

年金額を動かす3つの方法

50代から自分で動かせるのは、主に次の3つです。

方法1:受け取り始める時期を選ぶ(繰上げ・繰下げ)

年金は65歳受け取りが基本ですが、60歳から75歳までの間で開始時期を選べます。 1か月遅らせるごとに0.7%増え、1か月早めるごとに0.4%減ります。この増減は一生続きます。

受け取り開始65歳開始と比べた年金額
60歳24%減
65歳基準
70歳42%増
75歳84%増

方法2:60歳以降も厚生年金に入って働く

厚生年金には70歳まで加入でき、加入した分だけ年金が増えます。 たとえば月収18万円で60歳から5年間加入すると、厚生年金(報酬比例部分)だけで年約6万円増える計算です。 また2026年4月からは、賃金と老齢厚生年金の合計が月65万円以下なら、働きながら受け取る年金は減らされなくなりました(2025年度までは51万円)。

関連記事:60歳からも、今の仕事を続けますか?

方法3:国民年金の空白を埋める(任意加入・付加年金)

学生時代の未加入や未納などで国民年金の納付が40年に満たない方は、60〜65歳の間に任意加入して保険料を納められます。 1年分を納めると、老齢基礎年金は年約2万円増えます。保険料はおよそ10年で取り戻せる計算です。 独立して国民年金に加入する方は、月400円の「付加年金」も検討できます。納めた月数×200円が毎年上乗せされるため、2年で元が取れます。

自分の数字は「ねんきんネット」で試算する

3つの方法のうち、どれをどう組み合わせると自分の年金がいくらになるのか。 それを、ご自身の加入記録にもとづいて試算できるのが、日本年金機構の「ねんきんネット」です。

ツール役 割できること
ねんきん定期便現在地の確認加入記録の点検と、今のままの見込額
公的年金シミュレーター(厚生労働省)全体像をつかむログイン不要で、働き方や受給時期を変えた大まかな試算
ねんきんネット
(日本年金機構)
精密な試算1か月単位の加入記録にもとづく、条件を細かく変えた試算

マイナンバーカードがあれば、マイナポータル経由ですぐにログインできます。定期便を電子版で受け取ることもできます。

おすすめの使い方は次の順番です。

  1. ねんきん定期便で、加入記録に漏れや誤りがないかを確認する
  2. 公的年金シミュレーターで、受給開始年齢や働き方ごとの大まかな推移を眺める
  3. ねんきんネットで、「60歳以降の月収」「厚生年金に入る期間」「受け取り開始年齢」を変えた案を2〜3通り試算する

感情と勘定をそろえるために

「どう生きたいか」「どんなペースで働きたいか」という感情の希望は、とても大切です。 しかし、その希望を支えるには、確かな「勘定(数字の裏付け)」が欠かせません。

ねんきんネットで出した年金額は、あくまで額面です。 手取りの生活費として考えるには、税金や社会保険料、給与や退職金とあわせて整理する必要があります。

当オフィスの「お金の準備シート」に、ねんきんネットで試算した見込額を書き込み、働き方の選択肢を2つか3つ並べてみてください。 「何歳までいくら稼げば安心か」「退職金をどのくらい手元に残せるか」という現実的な道筋が見えてきます。

関連記事:50代のお金の準備|最初の一歩は、悩みのタイプで決まる

一人で整理するのが難しいときは

ねんきんネットの数字の読み取り方が分からないときや、これまでの職歴・家庭環境に合わせて働き方と受け取り方の組み合わせを比べたいときは、個別にご相談ください。

※制度の内容は2026年10月時点の情報にもとづいています。繰上げの減額率(月0.4%)は1962年4月2日以降に生まれた方、75歳までの繰下げは1952年4月2日以降に生まれた方が対象です。在職老齢年金の基準額は年度ごとに改定される場合があります。最新の情報は政府広報オンライン や日本年金機構のホームページ でご確認ください。

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この記事を書いた人

相談業務に30年以上従事。CFP®(1級FP技能士)・国家資格キャリアコンサルタント。金融商品の販売を行わない立場で、資産形成・運用・年金といった「お金の設計」を土台に、働き方や生き方全体の調和を整える「ライフバランスメンター」として活動。公的就労支援や学び直しの現場経験も活かし、50代からの持続可能な人生設計に伴走しています。
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